暑いですね。
BUILTLOGICは夏休みに入っていますが、いくつか動き出すプロジェクトがあり、その準備などで仕事モードを少しだけ残しながら過ごしています。
先日、13年前に竣工した「森の三角屋根」のお宅にお呼ばれして伺って来ました。
この家は「トステム設計コンテスト」で銀賞を頂いたり、雑誌にも幾つか掲載してもらったり、とても思い出深い家です。
夏休みなので、少し長めに記事を書いてみました。
個性的な建主さん(通称muttaさん)でした。
「寝室はいりません、季節毎に気持ち良い場所で寝ます」とか「個室もいりません、その替わり作業室とか研究室のような家族皆で使える場所が欲しい」とか「月を眺めるロフトか屋上が欲しい」とか、、、、、。既成概念にとらわれない家づくりでした。
そんな中で、印象に残っているのが「家を使い倒したい」というコメント。
当時、イームズの自邸のような、モノが溢れていても格好良い(?)、それでも落ち着くような雰囲気が好きだったので、そんなことをイメージして設計を進めたのが思い出されます。10年前くらいはそんなことを考えていました。
muttaさんご夫婦との設計期間も面白かった。
小さかった子供が寝た後に打合せが始まります。まずは、ビールとポテトチップスで乾杯して、お互い考えて来たことを発表する時間です。
あれこれと間取りを検討するだけでなく、外壁は白が良いのか黒が良いのか、、、。
屋上を作るのかロフトにするのか、、、。南側を向くのか、北側を向くのか、、、、。考えれば考えるほど、その時間が楽しかった。
設計がまとまり、見積依頼。これもまた、BUILTLOGICにとってはターニングポイントでもあったんです。今、思えば。
設計仲間の友人に工務店さんを2社紹介してもらって、価格はほとんど同じでした。初めてお付き合いする工務店さんなので、判断材料が無い、いや薄い、、、、、。
監督の家がご近所とか、そんな理由で1社に決めて工事をお願いしたような記憶があります。
その監督さんと一緒に仕事をすることで、BUILTLOGICの仕事の幅、設計の幅が大きく広がりました。
そして、監督が独立して新たな工務店を立ち上げた今でも、信頼して協働しています。
話しが逸れましたが、工事中もいろいろと楽しみながら進んでました。
キッチンのカウンターを無垢材にする事になっていて、材木屋さんの工場を訪ね、皆で材料を選びました。杉が良いのか、ウォルナットが良いか、値段的にはどうだろう、、。家具工事と言っても建築工事との絡みが多くて、家具屋さん的にもたいへんだったと思います。
その時、初めて会ったのが、これまた、今でもBUILTLOGICの家具をほとんどお願いしている家具屋さんです。
仕上げの段階では、珪藻土を皆で塗ったり、床のオイルを塗ったり、、、、、。
竣工写真をご覧頂くと分かりやすいですが、引渡しのタイミングで植栽はなにもありません。
お隣の桜の木が立派で、それが借景となっていました。2009年4月の写真です。
住まい始めてからの変化がとにかく面白い。
上の写真は、引き渡した年の夏の様子と秋の様子です。
夏、マウンド部分は既に芝となり、朝顔が窓の一部を覆っています。
それでも、秋はまだ裏山のほうが目立っています。
次の2枚は、竣工翌年2010年の春、取材で伺った4月と5月の写真です。
デッキで色々と苗の準備が始まっています。
2010年の夏です。
デッキには緑のカーテンが出現。
竣工当初、殺風景だった玄関アプローチにも植栽が入っています。
次の3枚は、2011年の10月頃です。
「天然生活」の取材で、ここまでくると家や建築ではなく、建主さんのライフスタイルに興味が向かいます。家の近くに畑を借りて、色々と育てています。
2013年の3月です。
車がルノーから、日産のラシーンに変わっています。家の奥に3軒目が建って、すべて同じ向きの三角屋根が並びました。そして、焼き杉の外壁は色が褪せてきました。竣工4年が経過しました。
そして、2016年10月。家の前の緑は完全に家を隠しました(笑)後ろの里山とつながった印象です。
ラシーンもまだ元気そう。足場を組んでご夫婦で焼杉の塗装工事を行っています。
西側はこんな感じ。
自作のアプローチ。いやいや、凄い。
そして先日、2022年8月に訪ねた家はまたまた進化してました。
車はラシーンからシトロエンのピカソに変わってました。(車好きなので気になります)植栽は相変わらず元気ですが、洗練されてきた印象もありました。
緑を通って玄関にアクセスしますが、以前は視線は下に向いてましたが、木が育って緑のトンネルを通過するイメージになっています。
ブログの冒頭に書いたように、モノが溢れていても心地良い、、、が実践されていたことが嬉しくなりました。そして外を見ると、こちらは緑で溢れています。
木部は総じて良い色に変化してました。
家全体を見学して、その後は昔を振り返ったり、畑の話し、デッキを拡張する話し、好きな音楽の話し、延々と5時間近く笑いっぱなしでした。本当に楽しい時間でした。
最後の写真は、インドで買ってきたという「タブラ」。床が良い色になっています。
家は背景なんだな、と実感するひととき。
背景だけど、愛着が持てるような家にすることが設計者の役割なんだと思ったのでした。
最近「施主力」というキーワードが私の廻りではタイムリーになってます。
まさに「施主力」が素晴らしい、muttaさんの家でした。
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